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窃盗罪の実行の着手時期とは?
Q.窃盗罪の実行の着手時期とは?
A.窃盗の結果,つまり占有者の意思に反する財物の占有移転の具体的危険性を含む行為を開始した時。
実行の着手
実行の着手とは,犯罪の実行行為を開始した時点をどの時点とするかという問題です。
実行に着手した後,実行行為を完了して犯罪の結果が発生すれば,その犯罪は既遂となります。他方,実行には着手したけれども,結果は発生しなかったという場合には,犯罪としては未遂ということになります。
つまり,実行の着手があったかどうかは,未遂犯として処罰すべきか不可罰とすべきかということに関わってくるのです。
通説的見解によれば,実行の着手は,構成要件的結果発生の現実的危険性を含む行為が開始されたかどうかを基準とするとされています(具体的危険説)。
窃盗罪の実行の着手時期
窃盗の場合,未遂犯も処罰されます(窃盗未遂罪)。したがって,どの時点を実行の着手とみるかは重要な問題となってきます。
前記の基準から考えると,窃盗罪の実行の着手時期は,窃盗の結果,つまり占有侵害の具体的危険性を含む行為を開始した時ということになります。
住居等に侵入して窃盗をするといういわゆる侵入盗の場合,侵入した時点ではいまだ具体的な危険性が発生したとまではいえませんから,実際に侵入後に財物を物色し始めた時に実行に着手したといえるとするのが判例です(最判昭和23年4月17日等)。
ただし,蔵や金庫室など財物等の保管のみを目的とした場所への侵入の場合には,そこへ侵入した時点で窃盗の実行の着手があると考えられています。
同様に,自動車盗や車上狙いの場合も,自動車のドアや窓を開けようとする行為をした時点で実行の着手があると考えられています。
もう1つよく問題とされるのが,スリの場合です。スリの場合には,財物があるかどうかを衣服の上から触って確かめる,いわゆる「当たり」行為の段階では実行の着手とまではいえないと考えられていますが,衣服の中に手を差し入れたような場合には,実行の着手があるという判例があります(最決昭和29年5月6日等)。
ただし,これらの行為もケースバイケースです。具体的な状況によっては,具体的危険性があるとして実行の着手となるという場合もあるでしょう。
不法領得の意思とは?
Q.不法領得の意思とは?
A.権利者の意思を排除して,他人の物を自己の所有物と同様に,その経済的用法に従って利用・処分する意思のことをいう。
不法領得の意思の要否
窃盗罪等の財産犯の成立については,主観的構成要件要素として,故意(構成要件的故意)のほかに,「不法領得の意思」が必要となるのかどうかという議論があります。
故意とは,犯罪事実の認識の問題ですが,それを超えて,積極的に他人の財産を領得しようという意思まで必要とすべきかどうかという議論です。
この点については,財産犯の保護法益を所有権その他の本権とする見解からは,単なる占有侵害ではなく本権侵害が財産犯の構成要件である以上,占有侵害の認識である故意を超えた不法領得の意思が必要であるとされ,財産犯の保護法益を占有とする見解からは,占有侵害の認識があれば足りるのであるから不法力の意思は不要であるとされてきました。
しかし,近時は,本権説から必要説が,占有説から不要説がそれぞれ論理必然的に導かれるわけではないと考えられています。
現に,判例は,占有説的な考え方を用いながら,不法領得の意思が主観的要素として必要となると判断しています。
不法領得の意思の内容
不法領得の意思は,保護法益論から論理必然的に導かれるというものではなく,むしろ,もっと実質的な理由,つまり,どの構成要件に該当するのかのメルクマールとしての機能を有していることから,必要とされると考えることができます。
第1に,犯罪となる窃盗罪と付加罰である使用窃盗との区別に必要となります。
すなわち,処罰の対象となる窃盗と,一時使用して後で返すという使用窃盗とは,他人の財物の占有を侵害するという事実においては何ら変わりありません。したがって,占有侵害の認識(故意)だけでは,両者を区別することができないのです。
第2に,窃盗等と毀棄・隠匿罪の区別にも必要となります。
窃盗罪と毀棄・隠匿罪(器物損壊罪など)を比べると,これも,他人の財物の占有を侵害するという点では違いがありません。したがって,やはり,占有侵害の認識(故意)だけでは,両者を区別することができないのです。
窃盗罪と使用窃盗,窃盗罪等と毀棄隠匿罪を構成要件該当性の段階で区別するためには,故意だけでは足りないということです。これらを区別するために,故意を超える意思,つまり不法領得の意思が必要となってくるのです。
そのように考えるならば,不法領得の意思とは,上記の区別のメルクマールとなるような内容を持ったものであるということになります。
すなわち,判例・通説は,不法領得の意思とは,権利者の意思を排除して,他人の物を自己の所有物と同様に,その経済的用法に従って利用・処分する意思であると解しています。
権利者の意思を排除して他人の物を自己の所有物と同様に扱うという点で,単なる使用窃盗ではないことを表しています。
そして,物を,その経済的用法に従って利用・処分するという点で,毀棄隠匿とは異なるということを表しているのです。
窃盗罪の主観的構成要件とは?
Q.窃盗罪の主観的構成要件とは?
A.構成要件的故意と不法領得の意思が必要となる。
窃盗罪の主観的構成要件
犯罪が成立するためには,構成要件に該当するものでなければなりません。通説的見解によれば,この構成要件には,客観的構成要件と主観的構成要件とがあります。
窃盗罪で言えば,客観的構成要件とは,他人の財物を窃取することです。では,主観的構成要件とは何かというと,故意と不法領得の意思がこれに当たります。
窃盗の故意
故意とは,刑法38条1項にいう「罪を犯す意思」です。責任要素であると同時に,主観的構成要件要素でもあると解されています。
主観的構成要件要素としても故意(構成要件的故意)とは,犯罪事実の認識を意味します。窃盗罪でいえば,結果の発生も含めて他人の財物を窃取するという事実を認識していたことが構成要件的故意となります。
不法領得の意思
窃盗罪においては,故意のほかに,主観的構成要件要素として不法領得の意思があることが必要となります。故意があるだけでは足りないのです。
不法領得の意思とは,権利者を排除して他人の財物を自己の所有物と同様に,その経済的用法に従って利用処分する意思のことをいうと解されています。
窃盗罪における窃取行為とは?
窃盗罪における他人の財物とは?
Q.窃盗罪における他人の財物とは?
A.物理的な管理が可能であり,財産的価値を有する他人の所有物のことをいう。
財物の有体性
窃盗罪が成立するためには,他人の占有する他人の財物を窃取することが必要となります。
ここで「財物」とは,原則として有体物,つまり,形のある物であると言われます。固体・液体・気体が財物に当たるのです。
ただし,電気は有体物ではないですが,刑法245条によって,財物とみなすものと規定されています。したがって,電気を窃取したとしても,窃盗罪が成立し得るということになります。
しかし,現代社会では,電気以外にも,有体物でなくても経済的価値のあるものが存在します。
そこで,現在の通説は,物理的に管理が可能なものであれば財物として取り扱うべきであると考えています。これを物理的管理可能性説とよんでいます。
財物性
財物というためには,有体性があり物理的管理可能性があるというだけでは足りません。「財」物というくらいですから,財産的な価値が必要となってきます。
したがって,まったく財産的な価値が無い物は財物に当たらず,それを窃取しても窃盗罪には該当しないことになります(現実的には,まったく財産的価値のない物というものはあまりないかもしれませんが)。
他人の財物
窃盗罪における財物は,ただの財物ではありません。他人の財物です。
そもそもこのようなことが観念できるのはさておいて,言うまでもないでしょうが,自分の財物を奪取しても,窃盗罪は成立しません。
他方,誰のものでもない財物(無主物)というものは観念することが可能ですし,また現実にもあり得るでしょうが,これを奪ったとしても権利や利益を害されるということはありません。
つまり,無主物を奪っても誰の法益も侵害しないのですから,その行為に刑罰を科して処罰する必要はありません。
そのため,窃盗罪が成立するためには,窃取した財物が他人のものである必要があるのです。他人性呼ぶこともあります。
窃盗罪における占有とは?
Q.窃盗罪における占有とは?
A.占有とは事実上の支配を意味する。この占有の有無は,占有の意思と占有の事実との相関関係によって判断される。
他人の占有する他人の財物
窃盗罪が成立するためには,他人の占有する他人の財物を窃取することが必要であるとされています。
例え,他人の財物であったとしても,それが自分が占有しているものや誰も占有していないものであれば窃盗罪は成立しないということです。
自分が占有している他人の財物を自分の物にしてしまう行為は,窃盗罪ではなく横領罪が検討されるべき問題ですし,誰も占有していない他人の財物を自分の物にしてしまう行為は,占有離脱物横領罪が検討されるべき問題となります。
占有
占有しているかどうかを判断するためには,占有の事実と占有の意思とが必要となると考えられています。
占有の事実とは,財物を事実上支配している状態を意味します。簡単に言えば,その財物をどのようにもコントロールすることができる状態に置いているということです。
この占有の事実は,必ずしも現実に所持していることを意味しません。現実に所持していない場合であっても,社会通念上排他的な支配が及んでいる場所にあって支配者を推知できるような場合も含んでいます。
現実に財物を持っている場合だけではなく,例えば,ある財物がAさんの家においてあった場合,その財物はAさんが占有していると考えることができるということです。
もっとも,さらに例えば,上記の例において,そのAさんの家にあった財物は,実はたまたま隣の家の子どもが間違えて投げ込んでしまったような物であったという場合にまで,Aさんの占有が及んでいると考えるのは行きすぎでしょう。
そこで,占有しているというためには,占有の意思が必要であると考えられています。占有の意思があってはじめて,占有というもの,占有の事実も発生されると考えられているのです。
占有の意思とは,財物を事実上支配する意思のことをいいます。
ある財物を特定の方法などで支配するという個別具体的な意思ではなく,包括的・抽象的な意思で足りると考えられています。
そのため,赤子や幼児であっても,ある物を自分のものとして支配しているという意志があれば,それは占有の意思があると言えることになります。
占有の判断方法
占有の意思と占有の事実は,上記のとおり,密接に関連しています。占有の事実がなければ占有は成立しえないですが,占有の意思がなければ占有の事実すら認められないのですから,占有が成立するためには,両方が必要となってくるのです。
そして,占有の有無は,この占有の事実と意思とを相関的に考慮して判断されると考えられています。
例えば,財物を現実に所持している場合のように占有の事実が強い場合には,占有の意思が弱いとしても,占有があると認められます。
逆に,離れた道端においてきてしまった場合のように占有の事実が弱い場合であっても,その財物を置いてきたことを常に意識していたように占有の意思が強い場合には,やはり占有があると認められることになるのです。
他人の財物を窃取する とは?
Q.他人の財物を窃取するとは?
A.自己以外の人の占有する有体物(または電気)の占有を,その人の意志に反して,自己又は第三者に移転する行為をいう。
窃盗罪の実行行為
窃盗罪の実行行為は,「他人の財物を窃取する」行為(刑法第235条)です。
この他人の財物を窃取する行為を考えるには,「他人の財物」と「窃取行為」とを分けて考えることが有益でしょう。
他人の財物
ここでいう「他人」とは,実行行為者(つまり,窃盗の犯人)以外のすべての人を意味します。
また,「財物」とは,有体物(固体・液体・気体),つまり形のある物を指します。ただし,電気は,有体物ではないものの,刑法245条によって,財物に含まれるものとして扱われています。
さらに,窃盗罪の客体となる他人の財物というためには,ただの他人の財物ではなく,他人が占有する財物でなければならないと考えられています。
窃取
「窃取」は,一般的に聞きなれない言葉かと思います。これは,財物の占有者の意思に反して財物の占有を自己又は第三者に移転する行為をいうと考えられています。
まとめると・・・
上記をまとめると,「他人の財物を窃取する」とは,自分以外の人の占有する有体物(または電気)の占有を,その人の意志に反して,自己又は第三者に移転する行為を意味するということができます。